初めての解体工事

私が以前建築系日雇いの派遣社員として働いていた頃の話です。普通毎日派遣会社から指定される現場は変わります。しかし、その週は毎日同じ現場でした。そう、その現場こそ私が初めて経験した解体工事の現場でした。

“”イカツイ担当者が来るんだろうな…””初現場の朝、私は早々と指定現場で待ちながら思っていました。今日来るのは“解体屋”です。何だかその響きだけで消極的な妄想が止まらなくなっていました。しかし、意外にも担当の方は人当たりの良い方でした。私が気合いを入れて“おはようございます!今日一日お世話になります!”っと挨拶すると、ニコニコしながら“おっ、元気だな~よろしくな。”っといってくださり少々拍子抜けしてしまいました。でもまだ油断は禁物です。仕事が始まった途端、怒声の指示が飛んで来るパターンもあるからです。しかし今回は“当たり”のようで、指示も丁寧で、私を焦らせることもなく、ゆっくりと仕事が進んでいきました。解体工事なのでバンバン壁を叩いて壊したり、天井を剥がしていったり恐ろしい音を立てて仕事をするのですが、耳が慣れれば何だか楽しくなってきました。10時の休憩の時間になり、“コーヒー買ってきてもらえるか”っと聞かれ、“はい!買ってきます”と威勢良く答えました。お金を渡され、“自分も好きなの買って良いからな”っと言われ、笑顔でありがとうございますっと答えました。コーヒーを買ったコンビニの帰り道、天気も良く、こんないい現場が続いてくれたらいいな~と思ったのが、私が経験した初めての解体工事の現場でした。

Comments are closed.